活動報告
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第5回ワークショップ
(2003年2月1日〜2月13日)
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2003年も、日本から講師を招いてワークショップを行う事が出来ました。 今回は、アジア学院・アラハバード農家大学との合同で、ネパールからも講師を招き、参加者もミゾラム以外のマニプール、メガラヤ、ナ ガランド、ミャンマーから招き、これまでにない規模で盛り沢山の内容で行いました。

スタッフ


三浦 照男

アジア学院副校長

山形 東

アジア学院畜産担当

高橋 丈夫

生命農法家

沢登 早苗

有機農業家。恵泉女学院大学講師。農学博士

P・ディクソン

アラハバード農科大学講師。獣医師

横田 仁志 コーディネーター

特別参加

 

安田 元

学生

高野 健治

有機農家

内容

日付

内容

2月1日

農業省にて開会式及びディスカッション

2月3日

HIFADI試験農場。横田がミゾラムにて試し、ある程度成功している韓国自然農法式による養鶏、養豚、乾季作、及び土着菌利用の実例紹介。

2月4日〜8日

プロジェクトエリアのチンチップ村で、
天恵緑汁、土着菌の採取、ボカシ作り
炭焼き、木酢液採取
段々畑切り起こし
剪定、接木
有用植物・薬用植物採取
の実習の他、
養鶏、堆肥舎養豚、床下養鶏
尿採取タンク
階段式堆肥舎
の見学を行いました。

2月10日〜11日

インド・ミャンマー国境の町、チャンパイにて、ブドウ・キーウィフルーツ農家の畑で剪定実習、園芸省試験農場見学、バイオガス利用農家見学。

2月13日

反省会

今回のワークショップに先だって、前年の2002年10月に現地調査の為に三浦さんが来訪しました(写真・農民調査 村で)。

現地調査(写真をクリックすると拡大して見られます)

セミナーは、持続可能な農業の普及を目的とし、こちらにある材料を使って農民と一緒に考えながら、進めていきました。ただ多くの人の参加を集うのではなく、少数精鋭で、ミゾラム州内3つの地域をみんなで移動しながら、それぞれの場所で違った課題をこなしていきました。 


天恵緑汁、土着菌の採取(写真・土着菌採取3)、ボカシ作り

天恵緑汁、土着菌の採取(写真をクリックすると拡大して見られます)

焼畑農業、粗放農業から近年突然農薬・化学肥料に変わった農民は、微生物と言う概念をほとんど持ち合わせておりません。地域の材料で自分で作れる肥料として関心が集まりました。

炭焼き、木酢液採取

チンチップ村では、これまでのワークショップで広められてきた炭焼きと木酢液の採取のトレーニングをしました。チンチップ村では良く広まっていますので手馴れたものですが、今回が初めての他地域からの参加者にとっては『噂に聞いていた木酢液』とあって強い興味を持って参加していました。

段々畑切り起こし(写真・棚畑実習開墾1)

棚畑実習開墾(写真をクリックすると拡大して見られます)

ミゾラムは急傾斜地であるにもかかわらず段々畑が普及しておりません。理由はいろいろあるとは思いますが、第一に考えられるのは、近代農業への移行に際して政府の保護が手厚く、重労働になる畑の切り起こしがおざなりにされ、今に至っている事だと思います。現在でも食料生産が充分でないにもかかわらず、各種の保護が農民に楽な現金収入を提供する形となり、積極的に切り開く農民はあまりいません。後述する反省会において、他の地域からの参加者は段々畑が当たり前のように言っておりましたが、ミゾラム人は、それが面倒である事と、焼畑信仰からどうしても離れられないのが大きな原因のように思われました。

剪定、接木(写真・ミカン接木実習2)

ミカン接木実習(写真をクリックすると拡大して見られます)

こちらの農家は剪定(木を切る事)を嫌って、なかなか実践してもらえません。木を切る事によって木が小さくなり、収穫が減ると信じて疑わないのです。これを機に剪定の意味を分かってもらえればと、剪定の効果に期待しています。今回は、チャンパイにおいての剪定実習では、1軒の農家のブドウ畑を全体の半分くらい剪定しました。込み合っていた枝がきれいに切り払われました。少しの実習では身体で覚えられない事と、切る度胸をつけてもらいたい事から、ブドウ農家にお願いして実習の場とさせてもらったのです。この畑が結果を出してくれれば地域の農家が皆、見習ってくれるものと期待しております。

有用植物・薬用植物採取(写真・園芸省農場薬草説明2)

有用植物・薬用植物採取(写真をクリックすると拡大して見られます)

「雑草と言う名の草は無い」(昭和天皇)
「雑草とはまだ用途が見つからない草の事だ」(有名な思想家の言葉)
ほとんどの草は何かに役立ちます。ネパールから招いたカマル・ライ氏による説明では、みんなで集めてきた雑草についての有効な使い方が説明されました。

養鶏、堆肥舎養豚、床下養鶏

これまで私が実験してみた結果をお見せし、理論と実践法を説明しました。私の農園では家畜の健康という点では全て成功しているのですが・・・

韓国式自然養豚では、ナガランドからの参加者も実践した経験がありましたが、皮膚病に侵されたり、うまく太らなかったりとの報告がありました。私の経験では病気は全く無く、いたって健康でしたので理由は分かりませんが、床に使うおが屑が悪かったのではないかと言う意見が出ました。ある種の木のおが屑は皮膚をかぶれさせるようです。

床下養鶏は、私のところでは無人の古い家の下で行って概ね成功していたので村でも普及しようと始めたのですが、実際の家は、毎日廃水が床下に流されていて、常にかなりの湿り気があることや、人間の生活により夜かなり遅くまで騒々しい事など、環境がだいぶ違います。加えて、動物を飼うという事の意識がミゾラム人にはかなり希薄なようで、キリスト教の影響もあってか、動物を可愛がるという事が出来ません。どうしても機械的な作業に走りがちなのです。生き物なので、やはり愛情がなくては難しいのです。

ちなみに酪農は、ミゾラムではほとんどネパール人により行なわれています。また、肉牛はバングラデシュやミャンマーの農耕牛が運ばれてきます。

尿採取タンク(写真・尿採取システム)

尿採取タンク(写真をクリックすると拡大して見られます)

このセミナーに先だって来られた三浦さんの提案で、人尿を採取して熟成させ、肥料をして使えるよう、教会のトイレにタンクをつけました。中を3層にし、3ヶ月熟成させた人尿が蛇口から取り出せるようにしました。ネパールなどでは家畜の尿を採取して肥料として使われています。同様に人尿も肥料として使えるのです。教会は人が良く集まるところなので多くの尿が採取できるのですが、畑まで運ぶのに遠いのが難点です。しかし、畑に作れば人が集まりません。

階段式堆肥舎

以前に皆様に報告させて頂いたものを、改めてセミナー参加者に紹介したものです。切り返しをするときに、材料を下に落としていくだけで楽なのですが、急傾斜地であるミゾラムでは、その堆肥の材料を運んでくるのが大変です。堆肥枠を使って、堆肥をどこでも作れるようにした方がいいのではという提案もありました。傾斜地のミゾラムでは、全てにおいて運搬方法がネックになります。

反省会(写真・反省会06)

反省会(写真をクリックすると拡大して見られます)

セミナーの最後に州政府ゲストハウスの会議室を使って、反省会を行いました。

行政のトップ会談も行われるミゾラムで一番豪華な会議室の使用で参加者からは活発な意見が多く出され、3時間の予定が6時間近くに及ぶ大討論会になりました。

盛り沢山の内容の中で、各人何が一番関心を持ったかについては、日本人スタッフと参加者の間で大きな違いが生まれました。日本人スタッフでは家畜に強い関心が集まりましたが、参加者は軒並み土着菌やボカシなどの肥料に集まりました。特にボカシは気の短いミゾラム人の気質に合っていると言う意見に皆納得しておりました。みんなで丸1日汗を流して作った段々畑については、あまり関心を持ってもらえなかったのですが、ミゾラム人参加者と他の州からの参加者ではその理由が全く違いました。ミゾラムの場合は『畑を作るのが面倒臭い』『常畑は草が生えるから嫌だ』と怠慢な理由です。他の地域の『当たり前になっているので関心が無い』は正反対の理由です。

日本人スタッフが期待していた家畜に関心が無かったのは、『初期投資するお金がない』『様々な病気が流行っているので恐い』がその理由。有畜複合農業には絶対に必要な家畜、ましてミゾラムは食肉の多くを他の州から輸入している状態ですので、関心を持ってもらいたい所です。

総評

今回は持続可能な農業を全般に渡って学習したことにより、農業とは全ての自然が結びついており、土の大切さや土が微生物によりできていることを理解してもらえたと思います。また少数精鋭で行ったため参加者同士がお互いが良く刺激し合い、他の地域からの参加者と交流する事によって視野を大きく広げさせる事が出来たと思います。

現地へ行ってみると、昨年渡したテキストを参考にした、一般的な三浦標準窯の設計で準備がしてありました。将来的にはこの地に窯を作る予定でしたが、本格的な炭窯作りは前述のように2週間はかかるので今回の計画には入っていませんでした。しかし、始めてしまったのでやるしかありませんでした。