ミゾラムからの手紙
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2000 年 9 月  

横田から近況が届きました(内容を再構成しています)。


日本を発って、途中のバンコクでは、JVCのノンジョック農場を訪ねました。

ここで活動している村上真平さんには以前からバンコクに寄るたびに地域開発や自然農業についての相談に乗っていただいていました。これまで日程的な理由で訪問できなかった農場を今回初めて訪ねることができたのは貴重な体験でした。

農場見学もさることながら、村上さんは、NGO活動についての話に時間を割いて、バングラデシュでの豊富な実践経験から、これまでの地域開発の問題点、地域開発とは如何にあるべきかを現状と照らし合わせながら語って下さいました。また、山岳地帯の焼畑農業の問題点の解決方法を分かりやすく説明して下さり、ミゾラムでの活動を始める直前で活動方針を変更しなくてはならないほどの素晴らしいアイディアでした。ここでの話は私にとってミゾラムの地域開発への最高の餞の言葉となりました。

カルカッタではミゾラム入域許可証を受け取り、日本領事館に滞在届を出し、インドの友人たちと再会しました。

カルカッタの外国人街は長年通っている場所なので皆気心が知れている人ばかりです。一日に何倍も飲むチャイ(ミルクティー)もみな誰かのおごり、ここからミゾラムへの航空券も日本から電話だけで旅行社が代金立替で手配、タクシーの運転手も友人なので、普通の旅行者のようにトラブルはありません。ここの喧騒と公害を除けば居心地は悪くありません。

ミゾラムへはカルカッタから飛行機で1時間、バングラデシュを飛び越えていきます。毎度の事ながら飛行機は6時間遅れ。天候や機材の故障が原因でやむを得ないのはしかたがないのですが、せめて空港内を整備して楽しく待てるようにしてもらいたいものです。インドの空港は何もなくて退屈この上ないのです。

退屈なのは飛行機に乗る側だけではありません。出迎えて待つほうはもっと退屈だと思います。ここミゾラムの空港はアイゾール市内から山道を45km、標高差1000m、車で2時間半。飛行機の出発を確認してからでは到着に間に合わないので、やはり時間通りに空港に来なければならず、この空港はカルカッタ以上に何もない。カルカッタ空港は小さいながらも売店があるので、本の立ち読みができ、チャイが買え、遅延状況によっては食事が出ます。しかしミゾラム空港には何もありません。開港して間もないと言うこともありますが、週3便しか来なければ商売も成り立たないでしょう。

特に大きな問題もなく8月9日の夕方にミゾラムに到着、多くの親類や地域開発関係者、農民が出迎えてくれました。自分が悪いわけでもないのに何故か「遅くなってごめんなさい」と謝りつつ(今日の午後6時間もここでボーッと私を待っていたのか?時間の無駄だ、仕事をしろ!)と呆れながらも出迎えられるのはいい気分。知らない人も含めみんなと握手して、知っている人と近況を話し合っているうちに、知らない人がポツリポツリと帰っていきます。(この人は私との握手のために6時間も待っていたのか!)と思った時に反省しきりとなったのでした。

翌日は外国人登録と早速インターネットの加入手続き、その後は連日いろいろな人の訪問を受ける合間に雑誌への寄稿、ローカルテレビのインタビュー、ミゾラム農協の新代表へ挨拶、開発モデル地域への訪問と慌しい8月を送りました。

この慌しい8月中に、インドの引越会社から通関のためカルカッタに出向かなければならない用事がありました。事前の話では通関に立ち会わなくて良いということだったのですが、交通費、滞在費を日本の引越会社が支払うことで交渉がが落ち着き、9月前半の2週間、私はカルカッタでインドの引越会社と税関での交渉に腹を立てながら過ごしたのでした。

今は、9月末に荷物が受け取れるということで、今ここでただで借りられた部屋を書斎にすべく本棚を作ったり、農業のテキストを訳したり人々の訪問を受けたりしながら待っているところです。

最後に漫才みたいな税関でのやり取りのさわりを紹介して終わります。これはあくまでさわりです。


「貴方の荷物は全部で425万円ですから、関税は62%の260万円支払ってください。」
「そんな馬鹿な! 家財にはかからない筈だ!」

「関税は家財にもかけられる。」
「古い下着にも税金をかけるのか? 俺のパンツにはウンチがついてるかもしれないぞ!」
「そうだろう、そう思うだろう。だから我々は、君のために相談に乗ってあげようと思っているんだ。必要ないものは払わなくていいんだ。我々は君を助けてあげたいんだ。」

とても白々しい言い方で腹が立ちます。

「ところで君は沢山の本を持ってきているが、どうするつもりだ。」
「自分で読む本だ。」

「売るつもりではないのか。」
「全部日本語だから、あんた達には読めない。誰も買わない。」

「この本は新しいのか?」
「古本だ」

「読んでない本がこんなにあるのか?」
「全部読んだ本だ。」

「全部読んだのに何故持ってくるんだ。全部忘れてしまったのか?」
「また読みたくなる時があるんだ。」


こんな調子で、荷物のリストの一つ一つをチェックされ、結局2年物のパソコンのインド評価額の32%、1万5千円を払わされた次第でした。